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岩倉 りさ
好んで読むのは表現としての小説。わかりやすい言葉で説明したり、単純化したりすることができず(あるいはそのようにすることを拒んで)小説として表現するしかなかったことを伝えている小説。架空の話をつうじて、現実を忘れさせてくれるのではなく、突きつけてくれる小説。なにかに対する答ではなく考える材料をくれる小説。伝えたい内容と形式が見事に一致した小説。ひりつくような思いで書かれた小説。読んだあとに世界が変わって見える小説。
そのような小説に出会うと、自分の内側からも思いが溢れてきて言葉にしておきたくなる。聞こえの良い言葉でまとめようとしていないか、自分に都合の良いように書かれていることをねじ曲げようとしていないか。言葉を選びながら読んだ小説への思いを書きつけるとき、小説と向き合いながら自分自身とも向き合うことになる。わたしにとって小説を読むことは楽しいことであると同時に恐ろしいことでもある。だから手放しに小説を好きだとは言えないけれど、自分らしくあるために、読まずにはいられない。
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