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ジャン=ルイ・トリューデル
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ジャン=ルイ・トリューデル

アンケート回答その1

(2012年9月公開)

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アンケート回答その2

(2012年10月公開)

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アンケート回答その3

(2012年11月公開)

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Q-1.
あなたのアイデンティティはどこの国/民族/文化にありますか?

A-1.

 ほとんどの場合、カナダ人としてのアイデンティティを使っています。とはいえ、カナダは多元的な国なので、カナダ人としてのアイデンティティは特定の民族や文化に帰属することを意味しません。実際、私はフランス国民でもあり、私の文化的アイデンティティの一部はフランスの土地に深く根ざしています。祖先からカナダの先住民の血を受け継いでいるので、アルゴンキン族と彼らの世界観に親しみや共感を覚える面もあります。また、フランス語と英語が不自由なく使えるので、カナダ、フランス、アメリカ、そしてブリテン諸島の文化にある程度は通じています。

Q-2.
SF/ファンタシイ/ホラー/スリップストリームといったジャンルはずっと英米語に支配されてきました。あなたがもっとも影響を受けたのは英米のジャンル小説ですか?

 

A-2.

 小説に関しては、英米のジャンル小説にもっとも影響を受けてきました。とはいえ、私の作品には私自身の科学的バックグラウンドと研究、政治的信条、そして私が仕事をするのが主にフランス語圏のカナダとフランスの出版業界であることが大きく関係しています。もしかしたら、これらを足し合わせると英米のジャンル小説の影響を越えるかもしれません。

Q-3.
英米小説とご自国の、あるいは非英語小説との読書の割合を教えてください。現在のものでけっこうです。

 

A-3.

 今現在は、(英語小説の割合は)5~10%ほどだと思います。ただし以前はもっと大きな割合を占めていました。

Q-4.
残念ながら多くのワールドなんとかは、じっさいにはアメリカのものです。野球のワールド・シリーズから、ぼくたちのジャンルのワールドコン(ぜんぶじゃないけれど)や世界幻想文学大賞にいたるまで。どうすれば、本来の枠組みにただせるでしょう、現実の無秩序な世界を反映するように?

 

A-4.

 世界を、あるいは少なくとも世界の主だったSF文化を本当に反映させるには、かなり煩雑でお役所的な機関の設置と資金調達が必要になるでしょう。この機関がさまざまな国や文化からのインプットの形式を整え、旅費や翻訳の予算、必要な通訳サービスなどを工面します。言い換えれば、国連のような枠組が必要になるということです。そのような構想がない以上、全世界に展開するジャンルの“本来の在りよう”を反映させることは不可能だと思います。それでも私たちは、異なる国同士の結びつきが深まるように努力していくべきですが。


Q-5.
たしかに、ぼくたちはアメリカのポップ・カルチャーの多大な影響を受けています。村上春樹もアメリカの小説やジャズの影響無しにはいまのような小説は書けませんでした。あなたの場合も同じでしょうか? そうした影響をまったく受けずに執筆することを想像できますか?

 

A-5.

 はい、私はアメリカのポップカルチャーの影響がなくても執筆できたと思います。それ以外にも、作家としてのキャリアを支えるのに十分に幅広く豊かな文化を受け継いでいますから。とはいえ、英米のジャンル小説の伝統が存在しなかったら、私の作風は大きく違っていたことでしょう。

Q-6.
最近では多くの若い作家や編集者が英語で仕事をし、アメリカのマーケットに向けて書いています。そんな仕事のしかたは邪道だと思いますか? それとも、影響の大きさを思えば当然のことだと思いますか?

A-6.

 私は英語でも執筆、出版してきました(といっても、ほとんどがカナダでのことですが)。他の作家が同じように英語で出版することや、彼らが成功を求めてアメリカ市場をターゲットにすることは悪いことではないと思います。ただ、母語での執筆を避ける作家がいることは残念に感じます。


Q-7.
もし英語で書くことになった場合、それは英米の読者に向けた仕事ですか、それとも世界の読者に向けたものになりますか?

 

A-7.

 私が英語で執筆する場合、だいたいは北アメリカの読者を想定しています。自分が一番よく理解している読者だからです。


Q-8.
地元の場で活躍している作家や作品で、世界の読者に心から推薦できるものがありますか?  それは英米にはないタイプのものだからですか? それとも、英米にもぴったりで、ともに楽しめるものをたくさんもっているからですか? 独自性と親和性とどちらのほうがだいじだとお考えですか?

A-8.

 作品を推薦する理由はその作家ごとに異なります。例えばDaniel Sernine の作品のいくつかは、ケベック人の考え方をユニークに表現しているという理由でお薦めしますね。一方で、Yves Meynard(フランス語話者のカナダ人で、フランス語と同じくらい英語でも執筆しています)やÉlisabeth Vonarburg(フランス生まれでカナダに移住してきました)をお薦めするのは、彼らの物語や文章が国籍とは関係なく一流だからです。いずれの作家も英米のジャンル小説との親和性がかなり高いですが、私が彼らを推薦するのは、彼らが提示しているものが独自性にあふれているからです。

Q-9.
ジャンルに関係なく、日本の小説を読んでおもしろかったものはありますか? どういった部分がおもしろかったのでしょう?

A-9.

 答はイエスです。小説や短篇を通じて、異なる文化や歴史に出会えることに特に魅力を感じます。漫画やアニメに見出される独創的なストーリーテリングにも惹かれるものがあります。

Q-10.
外国文学をあなたの地元の読者に、またあなたの地元の作品を外国の読者に広めるために、あなたはどんなことをしておいででしょうか?

 

A-10.

 フランス語の小説を、〈ローカス〉誌(ずいぶん以前ですが)や他の媒体で書評してきました。コンヴェンションでフランス語の小説について話したり、海外の作家を招くコンヴェンションを主催したこともあります。また、フランス語作品をいくつか英語に翻訳してきました。自分の作品を英訳することも、最初から英語で執筆することもあります。

(訳:志村未帆)

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ジャン=ルイ・トリューデル(Jean-Louis Trudel)は1967年生まれのカナダの作家、翻訳家。おもにフランス語で作品を発表するかたわら、カナダのフランス語SFの英訳にも取り組んでいる。また、〈ローカス〉でのレポートなどでカナダのフランス語圏SFの紹介普及にもつとめている。

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